ECG-043:answer
ECG-043:52才男性。労作性呼吸苦で受診でした。今まで診断されていませんでした。
ASD(心房中隔欠損)でした。
今の時代に、成人期まで見逃されることは、少ないのですが、ASDは成人になるまで、何の問題も生じないことがけっこうある=出産もしてしまう=ので、たまに遭遇します。
胸部レントゲンでは、左第 II 弓の突出が目立ちます。
IV弓も、なんかまるい形です。
心電図は、
*P波を読み過ぎないのが、私のやり方ですが、これはあまりにも尖ってます。
→II, III, aVFで顕著です。よく見ると前半部分(右房成分)です。
*右軸偏位が著明。
*V1-6まで、R波が高い。
*特にV1では、R/S>>1で、V3くらいでR=Sとなる。いつもと逆。
*S波が、幅も広いけど、V4-6でとても深い!!
*ストレイン型のST-T変化(陰性)が、V1-3に強い。
これを、右室肥大と考えると、全てが理解できます。
右室の表面に置かれているV1-2では、(LVH)のようなRVH所見です。
右室の拡大により、移行帯は時計方向に大きく回っています。
V5-6の深いS波は、RVHの影響です。
→LVHの時に、V1-2に深いS波ができるのが、LVHの影響の逆ですね。
この心電図所見に、肺動脈弓の拡大を添えると、圧負荷よりも、容量負荷を考えます。
◎肺血流シンチです。
→明らかな欠損像はなく、反復する肺塞栓の結果では、説明できません。
◎造影胸部CTでも、肺動脈/右心系の拡大はありますが、血栓像は認めません。
◎コントラスト心エコー像です。
右ー左シャントが確認できます。
この逆シャントは、まだ強いものでありませんが、一回目のstrokeですでに明らかです。
この手の心電図は、最初なかなか理解しづらいですが、ある程度数を見ていくと、「これは肺高血圧の時間の経ったやつだな」と、思えるようになります。正解は、いつものように心エコーに任せます。心電図でも、ある程度推定できますが、エコーは当てれば、1分くらいで正解をくれますから。
(注:複雑な先天性心奇形は、手練れで無いと、すぐには解読できません。もちろん、心電図だけでもわかりません。)