【コラム】この心電図本がすごい!(その2)
〔はい、この波形は後壁梗塞ですね。〕、〔あ、これは心外膜炎のST上昇みたいですね。〕、〔この陰性T波は、心尖部肥大型心筋症ですね。〕
と、答えることは、割と簡単なんですが。。
【なぜ、STが上昇するのか?】、【どうして、高K血症でT波が高くなるのか?】、【障害電流とST変化の関係は?】などと、電気生理学的・心電計の物理学的解釈や理解をしようとすると、すぐに壁にぶつかりますね。
通常の心電図本は、そんなことは説明しません。とにかく、12誘導心電図読めればいいんでしょう、的な本がほとんどです。このブログもそれに近い。真の意味で、化学・物理学を征服していないんです。
でも、僕たち医師もやっぱりscientist。原理原則も、できればきちんと知りたい。それと、よくわからない(知っているpatternでない)心電図に出会った時に、何が起きているのかを、推測する手がかりとなります。
この心電図本がすごい!(その2)
(メディカルシステム研修所:岡田保紀 著)
2,000円(2011/4月 改訂6版) →上記websiteに、サンプルページへのlinkあり
ネットより購入です。
この著者は、心エコー黎明期にその機器創造に立ち会い、携帯電話のボタンの反応を、何ミリセカンド遅らせるのが生理反応として心地よいか?の研究をするなど、医療系の工学の達人です。
心電図・脳波などの教育を行うお仕事を、現在なされています。
心電図の心には、12誘導心電図全体(で診断する)は出てきません。何故STが動くのか?電解質異常と細胞内外の電子の動きはどうなっているのか?虚血時の障害電流の流れと、心電計の反応はどうなっているのか?脱分極時のベクトルは? 不整脈編も充実です。
経験値で覚えろ式ではなく、心電図波形の成り立ち=心電図の心=が、ここに描かれています。明快な解説文と他の本ではなかなか得られない心電図Logicの図示が、なされています。
典型例を説明した12誘導心電図(or freeなこのブログなど)を左に、右のこの(心電図の心)を置いて、楽しく心電図のお勉強をされて下さいな。
心電図の講習会textでもありますが、単体でもネット販売されています。私は、サンプルpageを見て気に入って初回購入しました。2,000円はちょっと安すぎますが、内容は確かです!
送料別ですが、175pageで十二分な解説量があります。心電計のしくみまでわかります。
なお、(基礎不整脈編)・(虚血電解質編)・(心電図のなぜ?)は、別冊で内容の重複ありますが、カラー編です。
きちんと心電図理論を学びたい方向けです。
初心者級にもとても優しいのが、このブログとの大きな違いです。