ECG-123:answer
ECG-123:64才女性。糖尿病で当院外来のかかりつけの患者さんです。
クリックすると、拡大します。
心尖部に心室瘤形成を認めます。
短軸像では、9時→12時→3時方向で収縮性低下しています。
大きめのantero-septal wall motion damageです。
心筋の菲薄化・線維化はなく、まだviabilityは十分有りそうです。
.
さて、何が心電図で問題だったのでしょうか?
クリックすると、ECGが拡大します。
青→:小さな r 波があります。心室中隔の上部は少し生きています。
赤→:V2-5は、ほぼQS-patternです。ST上昇もあります。素直に虚血と考えてよいでしょう。
茶色→:V6で小さな r 波です。心筋は生きてるんでしょうけど、弱々しいです。通常は、V5の次に大きなR波が出てくるべき場所です。
緑→:III , aVF にも、QS-patternがあります。前下行枝(LAD)が長く、下壁にまで、虚血が及んでいる可能性を示します。実際、心室瘤を形成しています。II 誘導にR波が十分残っているのは、右冠動脈(RCA)が、intactであったことが理由なのでしょう。
.
V1,2にある r 波がV3,4となるにつれて無くなるのを、Reversed R Wave progression(RRWP)と呼びます。通常あり得ないことで、LAD領域の虚血の存在を考えさせる所見です。この症例では、QS & ST 上昇となっており、ischemic damage 以外は想像しにくい状況です。
.
本人が元気であり、安定状況なので、翌日心カテ・PCIは、施行されました。
.
クリックすると、拡大します。 PCI自体は、うまく施行できました。 Seg-7での完全閉塞を確認し、GWを通過させ、stentを留置しています。 最後の確認造影で、閉塞部位の再疎通と、その後のSeg-7以後の長いLADを撮影しています。 . 大きなLADでした。 また、Seg-7とLADの中程での閉塞でした。 これが、aVRでのST上昇を生まず、II,III,aVFでのST低下(ミラーイメージ)を生じなかった理由かもしれません。あるいは、すでに時間が経っていたからでしょう。 . おそらく発症4〜5日くらいのACSで、一番危ない時期(不整脈死)を、自力で乗り越えて、外来定期受診となっています。ラッキーな方です。 . 糖尿病では、無症状なACSが多いとされていますが、実際は、1〜2割くらいで、そんなに鈍感ではありません。この症例の先行する感冒様症状は、ACSの症状であった可能性が、高そうでした。 . . . . . .