【コラム-032】 Low Voltageを、悩まない。 - heart2019改　の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

【コラム】Low Voltageを、悩まない。

　心電図を見ていて、電位が低いことに、悩みませんか？

{胸部又は肢誘導にて、QRSの振幅が10mm(=1.0mV)を全て超えない場合}

　が、まあ皆が納得する Low Voltage の基準です。

　でも、(胸部誘導全てで、この基準を満たすことは、なかなかないよ)、とお師匠様も、仰有っていました。

　肢誘導全体での Low Voltageは、時々散見します。　

　説明は、横隔膜挙上で、総合ベクトルが、水平方向に起き上がり、肢誘導で電位が低下する、です。

　しかし、COPD系で、総合ベクトルが真下を向いているはずなのに、肢誘導が Low Voltageである。。。。

　よく説明できないことが、よくあります。

　「このように、うまく説明できない事は、心電図ではよくあることで、いちいち気にする必要は、ありません。」

　これも、お師匠様が教えて下さったことです。

　10年ほど前に、宮崎で開業された先生から、お電話を頂きました。

「Ｔ先生、20才代の男性で、急な左胸痛なんですよ。」

「(私)、若いですね。」

「心電図が変なので、そちらにFaxしていいですか？」

「(私)どんな風に、変ですか？」

「なんか、胸部誘導で電位が、妙に低いんですよ。」

「(私)それは、左の気胸ですよ。すぐに胸部レントゲンを見てみましょう！」

「えっ、じゃ、胸写を撮って、また連絡します。」

＊＊10分後＊＊

「T先生、すごいですね。やっぱり左気胸でした。心電図も見なくて、よくわかりましたね！？」

　やったー！心電図を見ずに心電図診断をした！オレって、いかしている～～！！

　30年医師をやっていて、左気胸で胸部誘導が Low Voltage 化する、との知識が役に立ったのは、後にも先にも、これ1回だけでした。。

　当院の救急外来に、気胸の患者さんは、もちろんよく来ます。

　でも、若い男性患者さんが、息苦しくて・呼吸音減弱があれば、(救急医は)すぐに胸部レントゲンを撮影して、トロッカーを挿入します。　

　私の心電図ブログの症例になるから、先に心電図を記録しておこう、などと、つまんないことは、皆考えておりません。

　このようなオタッキー心電図カルトクイズに答えられても、臨床では、ほとんど役に立たないんですね。

Low Voltage の原因として。

＊　肺気腫状態

＊　心のう液・胸水の体調貯留

＊　単に太りすぎ

　　　　⇒ 電極までの距離が遠のき、電位が下がる。

＊　心筋障害・虚血の進行

＊　甲状腺機能低下症

　　　　⇒ 心筋の起電力自体が、低下している。

＊　心電図ベクトル方向の変化

　　　　⇒ 横隔膜挙上による肢誘導低電位。

＊　左肺の気胸

＊　(よくわからないけど、低電位)

　　　　⇒ とても多いんです。

　　Low Voltageは、一応原因を考えましょう。

　　でも、原因がわからなかったら、そんなもんなんだ、とあっさり手を引いて下さいね。もし、原因追及して、論文にしたら、教えて下さい(^_^)。