ECG-144:answer
ECG-144:45才の男性の心窩部痛でした。
心電図を、素直に読んでみます。
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◎ 洞調律です。
◎ ST上昇が、広範な誘導で認められます。
◎ V2-4のT波は、尖っています。
◎ aVL誘導では、QS patternです。
◎ 全体的に High Voltage ですね。
◎ I 誘導において、R波は低いです。
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さて、どう解釈しましょうか?
臨床情報を、参考にしましょう。
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このST上昇を、ACS or 心外膜炎によるものだとすると、超急性期ですね。
心窩部痛は、数ヶ月以上続いています。
まず、合わないね、と思う部分です。
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トロポニン-I も、CPKも、上昇していません。
心エコーでも、壁運動は、良好でした。心のう液もありません。
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胸部レントゲンでは、立位心・滴状心ですね。
肺野は、ブラだらけです。
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★ I 誘導は、Lead-I-signであり、電気軸が下方を向いているために、低電位となっています。
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★ aVR=aVL となっているのも、同じ理由です。P波も陰性ですね。
(このQSは、虚血のサインでは、ないんですね。)
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★ 胸部誘導のST上昇と勢いの良いT波は、早期再分極の所見です。
(元気のよい若い方で、時に認められる所見です。)
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これらを、総合すると、この体型とCOPDを持つ患者さんとしては、あり得る心電図で、心窩部痛とは、何も関連していなかった、と解釈可能です。
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もう一つ気になるのは、MCV低値であることです。
COPD/Heavy smokerの中年男性は、往々にして、多血症です。
Hb自体はそう低くないけれど、MCV低値です。
つまり、この患者さんは、調子のよい時と比較すると、(貧血)なんですね。
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結果は、進行性の胃癌でした。(入院翌日に、内視鏡検査施行されています)
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心窩部痛だけならば、素直に、内視鏡&腹部エコーを主に、鑑別したでしょう。心電図所見に、少し悩みましたが、研修医は方向性は、見失いませんでした。むしろ、心疾患除外を、しっかりと視野に入れていたことを、嬉しく思います。
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