【 コラム-063:WPW 症候群 】ケント束についてのお話し
WPW症候群の本質は、デルタ波の存在です。心房ー心室間に短絡路(ケント束)がある!という証しです。
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発生の過程で、心房と心室は、房室結節のみを残して、電気的に絶縁されてしまいます。ところが、何らかの間違いで、(ケント束)と呼ばれる電気的短絡路が生じます。
しかも、複数本できてしまうことも、よくあります。
電気生理学的性質は、プルキンエ繊維等と同じく、Naチャネルを含み伝導スピードが速いんですね。よって、(デルタ波)をQRSの直前に作ってしまいます。
この伝導性は、癖が強いようで、
* 日によって、デルタ波の大きさが異なる。
* 間欠性にデルタ波が出たり、無くなったりする症例もある。
* 伝導の方向性が両側性(心房-心室)や、一方向性の場合がある。
など、けっこう気まぐれな奴なんです。
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どこに短絡路があるの?は、知りたいヒトは、知りたいものです。大まかに、分けると三つ。欧米では、A/Bだけと書いてある本もある。
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不整脈専門医にとっては、どこに短絡路があるかは、切実な問題です。ケント束を遮断するのが、彼らの悩み(=楽しみ?)ですから。
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12誘導心電図のみで、短絡路を決定するわけではなく、EPSで行うわけですが、大まかにその場所を推定するやり方があります。私は、とても覚えきれません。原法のwebsiteを紹介します。
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* ECG PEDIA.ORGのサイトで、WPWと入れるとすぐ分かります。
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* デルタ波を有する(=WPW症候群)率は、0.15~0.25%。職場の健診心電図でも、1,000人もいれば見る心電図です。男に多い。
* 器質的疾患を持つわけでは無いが、Ebsein奇形やMVP症例に合併しやすいとは、国歌試験問題的知識ですね。
* 40才を過ぎると、三分の一くらいは、ケント束の伝導が消失してしまう。
* 間欠性のWPW症候群では、その伝導性が低いために、頻拍発作は起こりにくい。
* 心房細動発作を合併すると、いわゆる Psuedo-VT となり、びっくりする。→このブログの最初の症例ですね。
* ケント束の伝導を切断するには、強力なNaチャネル遮断薬を使用する。* ジギタリスやCaチャネル遮断薬は、結果的にケント束の伝導を促進するから、禁忌となる。知ってますよね。
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