ECG-198:answer
**結論を先に**
左気胸とわかっっている症例に、診断目的の12誘導心電図は不要です。
気胸の確定診断は、レントゲンです。症状と理学的所見から、気胸を疑うことはできても、確定はできません。
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では、心電図は何か役に立つでしょうか?
胸部誘導は、Low-voltageとなりそうですね。これだけ心臓と胸部誘導の間に、絶縁体(=空気)があるのですから。
この症例の、気胸前後の胸部誘導心電図を、経時的に比較をしてみましょう。
クリックすると、ECGが拡大します。
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さらに、V3-5の部分の拡大表示です。
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確かに、左気胸時は、V3-5のQRS高が低くなっています。
胸部CTだと、左心室と胸壁の間は、完全にairのみです。この低電位化は、有力な(気胸の予測因子)となり、胸部レントゲン撮影前の左気胸診断前確率を、高めそうな気もします。
. . 別の症例を、見てみましょう。
80才代女性で、気胸はない症例です。何の症状もありません。
これで、胸痛を訴えて来たら、気胸も考えたくなります。
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確かに、重度の(=虚脱率の高い)左気胸では、胸部誘導のQRS高は軽減しそうです。幸運にも、左気胸出現前の心電図と比較できれば、なお役に立ちそうです。
でもね。
臨床的に役に立つとは、感度・特異度が出来るだけ高くて、
と云うことなんです。
=今回の教訓=
【左気胸の診断のために、12誘導心電図を急ぎ記録する理由はない】
【胸部誘導のQRS高は、虚脱度が高いと、減少する可能性がある】
【結局、レントゲンを撮るしか、診断には到達しない】
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