ECG-203:answer
(その1)
20才代の男性は、やせ型でした。偏平胸です。
呼吸苦でのER受診でした。外傷はありません。歩行来院で、胸部レントゲンは立位2方向撮っております。両側気胸を認め、脱気のための準備・説明の間に、12誘導心電図は記録されました。バイタルサインは、安定しています。
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* 12誘導心電図は、慣れた技師が操作すれば、装着開始からスタートボタンを押すまで、45秒ほどです。記録終了まで、2分かかりません。もちろん、気胸と分かっていてショックだったら、即脱気作業です。心電図は要らない。
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両側気胸時の心電図では、
◎ CRBBB。これ自体はさほど問題ではない。
◎ V3-5のQRS電位が、妙に低い。(生理的には、ちょっと説明困難。。)
◎ 著明な右軸偏位を示す。(これは、重大な所見です。)
この心電図が、あろうが無かろうが、気胸は臨床鑑別の上位に来ますね。
(これで、肺野に異常がなければ、肺塞栓が上位となります。)
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胸部レントゲンは、両側気胸でした。これは(心電図より)想像困難。呼吸音が両側弱いからと云って、普通思いつかない。
脱気のために、両側胸腔にドレナージ施行中の心電図を見ると、ER時と比べて
- 右軸偏位が、少し改善している。(CRBBBなので、ある程度は右に引っ張られます)
- V3,4の誘導で、QRS高が高くなっている。(電位の回復)
- V1のP波の後半陰性部分が、深くなっている。脱気後の胸部CTを見ると分かりますが、偏平胸で心臓全体が、左胸郭内に、ほとんどあります。両側気胸が、有るときは、心臓が正中位に戻って、V1の陰性T波が消えていたようです。
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(その2)
90才代の男性で、上行結腸癌でしたが、高齢でPS4の状況なので、根治術・化学療法を含めて施行されず、経過観察となっていた患者さんでした。
すっかりやせ細って、食事も食べられなくなりました。見ただけで、全身浮腫の状況です。胸部レントゲン・胸部CTで、胸水と皮下の浮腫が著明なのが分かります。心のう液は、わずかです。
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2年前の臨床的問題が無い頃の心電図と、比較することが出来ました。
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圧倒的な電位差があります。Low vltageとなりました。
今回に限らず、気胸よりも、著明な浮腫の方が、電位低下が強いようです。 (そう感じています)
でも、この様になる症例は、すでに患者さんを見ただけで、おかしいんですね。
心電図で、これらの病態を診断するのではなく、
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【 これだけの気胸・浮腫があれば、心電図もおかしくなるよね 】
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と受け取って、心電図解釈を考え込まないのが、吉だと思います。
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