ECG-231 : Answer
心房細動であることは、すぐに理解できますね。
*P波の欠如
*絶対的不整
*f波の存在(十分条件)
全ての条件が揃っています、心房細動の。
洞調律のQRS/ST-Tと、今回の心房細動時のそれは、殆ど変化有りません。MVP/MRにでは、心負荷があっても、あんまりST-Tは変化しません。ここが、大動脈弁疾患の心電図と異なる部分です。左室肥大となり難いんですね。
他方、左房にはMR/MVPにより直接負担がかかるので、心房細動にもありやすいんです。そして、心房細動化は心臓の負担が、限界に来ている徴候です。
心房細動の治療は、DC-shockを除き、以下の様になります。
◎ カテーテル・アブレーションによる心房細動治療。
◎ 心臓外科による、僧帽弁形成術とMaze手術。
高血圧・糖尿病・喫煙と、リスクが揃っており、治療の基本として、DOACによる抗凝固療法を始めました。頻脈のコントロールとして、β-blockerを追加しています。
MVP/MRがあるために、抗不整脈薬を使用しても、洞調律の維持は難しい状況です。カテーテル・アブレーションのみでも、心房細動再発のリスクは高いと思われます。
外科手術により、MVP/MRを治療し、さらにMaze手術で心房細動を抑止します。今回は、ここまで行う方針となり、心臓外科を持つ連携施設へご紹介となりました。
今回の心電図は、(ただの心房細動)でした。この症例をどう治療するかは、文脈(この患者さんの置かれた状況)に即して決定されます。
超高齢者では、何も介入せず、経過観察もあります。同じ心房細動でも、対応が異なることがある、が今回の学びのつもりです。
(僧帽弁逸脱による僧帽弁逆流)
PML:Posterior Mitral Leaflet = 僧帽弁後尖
MVP:Mitral Valve Prolapse=僧帽弁逸脱
(僧帽弁の構成図)
前尖をA、後尖をP。
三分割して、1,2,3 と割り振っています。
なお、この症例は、ECG-128のその後の経過です。外来でのお付き合いが長い患者さんでした。
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