ECG-269:answer
皆さんは、「神様のカルテ」は読まれていますか?
この本の最初の数ページが描く救急外来の現場描写は、泪が出そうでした。賽の河原に石を積むような患者診療の繰り返し。それを、温かく・悲哀を持って語っています。この先の展開がどうであれ、この本を医療者皆が好きになる(引きずり込まれる)イントロです。
https://www.amazon.co.jp/神様のカルテ-小学館文庫-夏川-草介/dp/4094086188/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1518010068&sr=8-1&keywords=神様のカルテ
救急外来での(最初の情報)は、ものすごく引きずられます。特に、ERがざわざわとしている時は。
心電図を見てみると、
- ◎ II, III, aVF のST上昇が著明です。
- ◎ aVL のST低下が著明です。
- ◎ VII = VIII のST上昇で、その差が分かりません(-_-)。
- ◎ V1,2のST低下。
- ◎ V6 のST上昇あり。
みんな併せて下後壁のACSです。反論無しです。
すぐに、心カテ出しです。PCI施行。RCA #3の完全閉塞でした。
(RCA病変か?LCX病変か?その鑑別など、どうでも良い。)
私たちの何が、いけなかったのか?
振り返りの評価です。
ドアウェイ・インフォメーションに、惑わされたようです。
PCI後に、丹念に問診をやり直しました。
* もともと、労作時の胸部不快感が、朝にあって十日ほど経過してた。
* 今日も、朝の動き出しで胸痛と冷汗を経験した。
* あんまり改善せずに、背中も痛くなったので、ERを午前中に受診した。
* 受付に、「背中が痛いんです」と申し入れて、受診票を記入した。
聞けば聞くほど、R/O ACSの病歴です。
確かに、受診時の採血結果はトロポニンI 値も低く、また胸部CTでは大動脈解離の所見を、得ませんでした。
でも、しかし、やっぱり、上記の問診からは、(十分以内に、12誘導心電図を記録する!)の方針で、加療を開始すべきでした。
午前10:44 ER受診
午前11:20 採血と胸部CT施行
午前11:44 12誘導心電図記録 → 循環器を呼べ!!
午後00:11 DSA室へ入室。PCI施行。
その後、合併症無く経過し、DAPT、スタチン、β-blocker、ACEi等を処方しての近医紹介となりました。
その後の追跡心カテでも、再狭窄を認めませんでした。
PCI時の心カテ所見。 血液検査結果の経時的変化。 PCI前後の心電図変化。を、提示します。
クリックすると、ECGが拡大します。
PCI直後に、心電図のST変化は改善しております。Q波は、ハッキリしてきています。下壁のR波高も、減りました。
最後に、今回の教訓をお復習いします。
【 ドアウェイ・インフォメーションに、振り回されない 】
【 大動脈解離を疑えばこそ、ACS除外の問診/心電図を外さない 】
【 ERは、忙しい時こそ、丁寧な問診を 】
忙しい時の丁寧な問診・・・分かっているんですけどね。
映画 「神様のカルテ」 の中で、主人公が日々の診療に疲れて、妻の元にトボトボと帰る歩き姿が、とても印象的でした。
.
.