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Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-269:answer

   皆さんは、「神様のカルテ」は読まれていますか?

   この本の最初の数ページが描く救急外来の現場描写は、泪が出そうでした。賽の河原に石を積むような患者診療の繰り返し。それを、温かく・悲哀を持って語っています。この先の展開がどうであれ、この本を医療者皆が好きになる(引きずり込まれる)イントロです。

https://www.amazon.co.jp/神様のカルテ-小学館文庫-夏川-草介/dp/4094086188/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1518010068&sr=8-1&keywords=神様のカルテ

  救急外来での(最初の情報)は、ものすごく引きずられます。特に、ERがざわざわとしている時は。

   心電図を見てみると、

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  •   II, III, aVST上昇が著明です。
  •   aVL ST低下が著明です。
  •   VII  =  VIII ST上昇で、その差が分かりません(-_-)。
  •   V1,2ST低下。
  •   V6 ST上昇あり。

  みんな併せて下後壁のACSです。反論無しです。

  すぐに、心カテ出しです。PCI施行。RCA #3の完全閉塞でした。

  (RCA病変か?LCX病変か?その鑑別など、どうでも良い。)

  私たちの何が、いけなかったのか?

  振り返りの評価です。

  ドアウェイ・インフォメーションに、惑わされたようです。

  PCI後に、丹念に問診をやり直しました。

*  もともと、労作時の胸部不快感が、朝にあって十日ほど経過してた。

*  今日も、朝の動き出しで胸痛と冷汗を経験した。

*  あんまり改善せずに、背中も痛くなったので、ERを午前中に受診した。

*  受付に、「背中が痛いんです」と申し入れて、受診票を記入した。

  聞けば聞くほど、R/O ACSの病歴です。

  確かに、受診時の採血結果はトロポニンI 値も低く、また胸部CTでは大動脈解離の所見を、得ませんでした。

  でも、しかし、やっぱり、上記の問診からは、(十分以内に、12誘導心電図を記録する!)の方針で、加療を開始すべきでした。

 

午前10:44 ER受診

午前11:20 採血と胸部CT施行

午前11:44 12誘導心電図記録   →  循環器を呼べ!!

午後00:11 DSA室へ入室。PCI施行。

   その後、合併症無く経過し、DAPT、スタチン、β-blocker、ACEi等を処方しての近医紹介となりました。

   その後の追跡心カテでも、再狭窄を認めませんでした。

 

    PCI時の心カテ所見。 血液検査結果の経時的変化。  PCI前後の心電図変化。を、提示します。 


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クリックすると、ECGが拡大します。

 

  PCI直後に、心電図のST変化は改善しております。Q波は、ハッキリしてきています。下壁のR波高も、減りました。

 最後に、今回の教訓をお復習いします。

【  ドアウェイ・インフォメーションに、振り回されない 】

【  大動脈解離を疑えばこそ、ACS除外の問診/心電図を外さない 】

【  ERは、忙しい時こそ、丁寧な問診を 】

 忙しい時の丁寧な問診・・・分かっているんですけどね。

  映画 「神様のカルテ」 の中で、主人公が日々の診療に疲れて、妻の元にトボトボと帰る歩き姿が、とても印象的でした。



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