heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-283:answer

   70才代男性です。ACSでの搬入でした。

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   II, III, aVF でのST上昇と、I, aVLでのST低下で、ACSは確定ですね。

  P波が、不安定ですが、今回の主目的ではないので、AV-block追求は省略。

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は、ST上昇。虚血部位の主体。

は、ミラーイメージとしてのST低下です。

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Ecg283erweb

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  冠動脈造影図を提示します。

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Ecg283cagpci

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 主病変は、#3の完全閉塞で有り、右室梗塞との関与は低そうです。しかし、V4RST上昇があります。この解釈は、悩ましいですね。

   PCI後に、側壁まで栄養する大きな4AVが描出されています。すごく大きな支配領域を持つRCAだったんです。

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  さて、問題の〔二段脈〕です。PCI後のICUでの出来事です。

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 Rule of bigeminy(二段脈の法則)が、あります。

  二段脈は、いったん始まるとなかなか止まりません。正常⇒PVC⇒正常⇒PVC⇒正常⇒PVC・・・と、頑固にPVCが出現するパターンが一定の規則内に留まります。数は多いけれど、実害はない。Holter-ECGで、全心拍数の10%以下くらいで、二段脈でPVC数千個出ても、症状が無ければ、経過観察となります。

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  何もベースに問題なければ・・・・です。

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  さて、この症例です。

  ACSです。その急性期です。不整脈が全く出ていなくても、VT/Vf出現のリスクを持ちます。二段脈だから安心だ、は通用しません。

  そしてよく見ると、このPVCは、二段脈となっております。

  (右端のERの波形と比較すると、T波にPVCが乗っているが、よく分かります)

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Ecg2837icuweb


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は、R on T でPVCが発生してることを示します。

は、PVCによる逆行性P波です。

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  これは、ヤバイよね、と思うべきです。見かけが良くても、ICUを出ることが出来ません。

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* 右脚ブロックパターンなので、PVC起源は左室側。

* II, III, aVFで、PVCはQSパターンなので左室の下部が起源。

V5,6のPVCは、ほぼQSパターンなので、側壁側が起源。

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  左室側壁下部からのPVC出現と、思われます。

  すでに、β-blockerは投与開始しており、低カリウム血症を、補正で避けました。

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  でも、次のようになってしまいました。

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Ecg2838vticuweb


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   見事なVTです。

   波形は、二段脈のPVCとほぼ同じですね。左室側壁下部が起源でしょう。

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   アミオダロンとMgSO4を投与しました。治るのにけっこう時間が掛かりました。  

   アブレーションの専門家からは、ACS時のVTでは、フォーカスがまだ定まらないので=急性期の虚血部位は変動します=今は出来ません sorry。とのコメントを頂きました。

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   この症例は、対側のLADへのPCIもありました。いろいろ他のドラマもあったのですが、今回は略させて頂きます。

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  今回の教訓

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ACS時の二段脈は、その後の展開に要注意 】

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【 心疾患を持った  R on T は、本当に危険です! 】

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2015_9_27_2