ECG-283:answer
70才代男性です。ACSでの搬入でした。
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II, III, aVF でのST上昇と、I, aVLでのST低下で、ACSは確定ですね。
P波が、不安定ですが、今回の主目的ではないので、AV-block追求は省略。
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↑は、ST上昇。虚血部位の主体。
↓は、ミラーイメージとしてのST低下です。
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冠動脈造影図を提示します。
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主病変は、#3の完全閉塞で有り、右室梗塞との関与は低そうです。しかし、V4RのST上昇があります。この解釈は、悩ましいですね。
PCI後に、側壁まで栄養する大きな4AVが描出されています。すごく大きな支配領域を持つRCAだったんです。
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さて、問題の〔二段脈〕です。PCI後のICUでの出来事です。
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Rule of bigeminy(二段脈の法則)が、あります。
二段脈は、いったん始まるとなかなか止まりません。正常⇒PVC⇒正常⇒PVC⇒正常⇒PVC・・・と、頑固にPVCが出現するパターンが一定の規則内に留まります。数は多いけれど、実害はない。Holter-ECGで、全心拍数の10%以下くらいで、二段脈でPVC数千個出ても、症状が無ければ、経過観察となります。
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何もベースに問題なければ・・・・です。
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さて、この症例です。
ACSです。その急性期です。不整脈が全く出ていなくても、VT/Vf出現のリスクを持ちます。二段脈だから安心だ、は通用しません。
そしてよく見ると、このPVCは、二段脈となっております。
(右端のERの波形と比較すると、T波にPVCが乗っているが、よく分かります)
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▼は、R on T でPVCが発生してることを示します。
▼は、PVCによる逆行性P波です。
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これは、ヤバイよね、と思うべきです。見かけが良くても、ICUを出ることが出来ません。
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* 右脚ブロックパターンなので、PVC起源は左室側。
* II, III, aVFで、PVCはQSパターンなので左室の下部が起源。
* V5,6のPVCは、ほぼQSパターンなので、側壁側が起源。
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左室側壁下部からのPVC出現と、思われます。
すでに、β-blockerは投与開始しており、低カリウム血症を、補正で避けました。
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でも、次のようになってしまいました。
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見事なVTです。
波形は、二段脈のPVCとほぼ同じですね。左室側壁下部が起源でしょう。
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アミオダロンとMgSO4を投与しました。治るのにけっこう時間が掛かりました。
アブレーションの専門家からは、ACS時のVTでは、フォーカスがまだ定まらないので=急性期の虚血部位は変動します=今は出来ません sorry。とのコメントを頂きました。
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この症例は、対側のLADへのPCIもありました。いろいろ他のドラマもあったのですが、今回は略させて頂きます。
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今回の教訓
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【 ACS時の二段脈は、その後の展開に要注意 】
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【 心疾患を持った R on T は、本当に危険です! 】
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