ECG-289::answer
80才代女性です。めまい→失神でした。
ジソピラミドの長期服用者で、
◎ 2:1 AV block
◎ Complete AV block & PVC
◎ VT そして、またCAVB、VTをくり返す。
となっています。
ジソピラミドは、Vaughn Williams分類の Ia 群の抗不整脈薬です。
PVCを退治するためなんかに、ジソピラミド等を投与しない方が吉です。でも、EBM以前の不整脈テキストには、【 Holter-ECGでPVC
を50%以下にすることを、目標に投薬しましょう 】なんて、マジで書いてあったんですね。
最初は問題なかったのに、経年的に心筋の状況が変わってきて、ジソピラミドが催不整脈作用を起こしたようです。
そしてそのnon-sustained VTは、CAVB(完全房室ブロック)による徐脈です。
QT延長と徐脈は、なおさらVTを誘発します。
Mgを、おまじないでゆっくりと静注する。
一時ペーシングで、徐脈を改善する。
それでもだめなら、イソプロテレノールの点滴投与。
一時ペーシングで、VT発生は治まりました。ジソピラミドを休止することで、その後ペーシングを止めても、VTは出現しておりません。
経時的に、12誘導心電図波形を比較してみましょう。
ジソピラミド休止の(X+5 days)では、QRS幅も狭くなり、QT時間も短縮されています。
安心して使える抗不整脈薬は、結局ワソランとβ-blockerとなります。徐脈のリスクは、勿論ありますが。
アミオダロンも、強い助っ人ですが、間質性肺炎などやっかいな副作用があります。
さて、今回の教訓です。
【 Do not harm の原則に従って、やたらに抗不整脈薬を処方しない 】
【 不整脈退治は、専門医に任せる。そう、割り切る 】