ECG-293:answer
80才代女性の、嘔吐とめまい発作でした。
経過を見ていたら、約半日で、ST-T変化が、明瞭になってしまいました。
まず、搬入時心電図を、再検討してみます。
クリックすると、ECGが拡大します。
V5,6及び、I・II , aVLで、ST低下を示しています。
但し、以前の心電図が記録されてなく、狭心症発作かは、明瞭ではありません。
めまいが主体で、さほど気にしなかったんです。
入院後、13時間ほどして、再度の心電図で、ちょっとびっくりです。
クリックすると、ECGが拡大します。
V2-6及び、I , aVLで、ST上昇を示しています。
何かが起きていることは、確かになりました。
心エコーを行いました。
(左室長軸断層像)
(心尖部からの左室長軸断層像)
(心尖部・四腔断層像)
(左室短軸像)
この時点で、前下行枝のACSを、強く疑いました。緊急の冠動脈造影を、施行しております。
予想に反して、回旋枝(#13)に、有意狭窄を認めました。
IVUSは、施行出来ませんでした。
ここを、targetにPCIが施行されております。
クリックすると、拡大します。
以後、静かに時間は過ぎて、患者さんも順調に回復しました。
経時的な心筋酵素値の変動を、お示しします。
クリックすると、拡大します。
う~ん、微少な変動に留まっていますね。
不安定狭心症で、済んでいたのか?
一連の心電図変化を、経時的に表示します。
クリックすると、ECGが拡大します。
PCIは施行しましたが、最終的にこの症例が、ACSなのか?たこつぼ心筋症なのか?かなりの議論となりました。
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◎ LAD病変(おそらく#7レベル)の病変を予測していた。
◎ 心エコーでの壁運動障害と併せて、準緊急心カテに持ち込んだ。
◎ しかし、#13の病変であった。
◎ PCI後のトロポニン、CPKの上昇は軽度であった。
◎ X+2dayにあるように、QT延長を伴った巨大陰性T波を、心尖部周辺に認めた。
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これらを併せると、たこつぼ心筋症に、#13の有意狭窄をたまたま認め、それに対するPCIが施行されてしまった。。と考えるべきか、と推定しました。
#13の病変が、不安定プラークだったのか、IVUSができれば良かったのですが、今回は施行出来ませんでした。
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教訓の残る症例でした。
事後カンファレンスでは、いろいろと思考出来ましたが、目の前のSTEMIと判断した症例の有機狭窄病変を、waitingは出来ませんでした。
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対角枝や、鈍角枝は、胸部誘導の走行(V2-6)に沿って、走行していることがあります。そのために、さほど虚血領域が大きくないのに、広範な心電図変化を生じることがあります。
さらに、free-wall左室を支配していますので、心破裂に繋がる事もあります。
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いろいろと、考えさせられた症例でした。
今回は、一言教訓は無しです。
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