ECG-296:answer
変な心電図ですね。
いろいろと、屁理屈を付けて説明するより、心電図自体がおかしいんじゃないか?と疑いたくなります。
⭕️ R波高の著明な高値。(よほどの心疾患が有るのか?)
⭕️ ST上昇と下降が、ワイルドです。(これがACSなら、きっとLMT病変)
⭕️ これが、側壁(I, aVL)にまで、拡がっている。
.
鑑別診断です。
重度のACS、巨大肺塞栓、大動脈解離で心タンポナーデ、AS/ARなどなど。。
でも、元気でニコニコなんですね。
引き継いだ研修医は、私の提案を受けて心電図解読の前に、理学所見を取りました。
研修医:先生!大変です。両側の胸部術後です!(おっぱいがありません、両方とも)
私:20年の間隔で、(右→左と)乳癌手術をされているんですね。今は少なくなったけど、ハルステッドの郭清手術を行うと、広範な組織を除去するんだ。
(胸部CT像です。動画です。)
ハルステッドの手術(乳房切除+大胸筋,小胸筋,腋窩から鎖骨下リンパ節の切除)する術式。現在は、この術式は、ほぼ絶滅している。
http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g4/q18/
胸部電極が胸膜・肋骨・皮膚を介して、直接心臓に取り付けられる(様な)事になる。だから、常識では考え難い波形となります。
ハルステッド法以外でも、極度のやせ(ex.COPD)では、高電位のみは、よく生じます。左室肥大では、ありません。
研修医:心電図は、患者さんを見て評価・診断なんですね。
私:そうなんだ。ぼくも、患者さん診てなかったら、びっくりしてたかも。。
(心電図の自動診断:771-6 急性の前壁梗塞:V2,V3,V4について )
自動診断は、横方向(時間軸)に対しては精度が高く、縦方向(波高)には鈍感であると、云われています。
この症例でも、心電計くんは慌てたようです。
確かに V1-4でST上昇しており、可能性はあります。V6では著明にST低下があり、なんかとんでもない事が起きてる気もします。
しかし、心筋逸脱酵素の上昇無く、心エコーでの左室壁運動は正常で、本人も何ともありません。
ハルステッドの手術後だとは、心電計も想像は出来ませんもんね。
年齢・性別・見た目・聴診所見・有れば今日レントゲン所見など、
【 患者情報を持って、心電図診断しましょう 】