ECG-298:answer
40才代女性です。労作性呼吸苦の患者さんです。
心エコーでは、典型的な右室負荷を認めます。
この症例のエコーのポイントは、
- ◎左室短軸像での、D-shapeパターン(心室中隔の拡張期平坦化)
- ◎右室・右房の明瞭な拡大
- ◎右室壁は、可動性を示している。
- ◎右室の乳頭筋の肥大が、はっきりしない。
カラードプラ像で、先天性心疾患としての短絡血流を認めませんでした。
房室関連も、問題ありません。
右室乳頭筋の著明な肥大がない→幼少期からの右室圧亢進では、なさそう。
肺血流シンチでの楔状欠損無く、肺動脈造影での血栓も認めません。
何らかの後天性の肺高血圧症のようです。
右室は、容量負荷であれ、圧負荷であれ、右室拡大を呈します。大動脈弁狭窄症のような求心性肥大は、起こしません、起こせません。基本的に、低圧系であるため、左室のような肥大のみでの対応は、できないのです。
上記のことを、念頭において、心電図像は以下の様に想像されます。
- ☆ RVHとしてのV1-3 あたりの右室高電位はないでしょう。
- ☆ IRBBB,CRBBBは、合併している可能性あり。
- ☆ 右室の拡大が著明なので、移行帯はV5以後にあるはず。(R=Sとなる場所)
- ☆ 右室負荷としてのST-T変化(strain pattern)が、V1-2 であるかも。
- ☆ 肺性P様の、尖りP波が II, III, aVFにあるかも。
- ☆ 右軸偏位は、絶対ある!
などど予想しました。
で、現実の12誘導心電図+V7-9 です。
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解説すると、以下の様になります。
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この時に行われた右心カテ(Swan Ganz catheter)での圧測定結果です。
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PAからRVへの引き抜き圧波形と、右房圧波形を提示します。
PA収縮期圧=78mmHg、RV圧=83mmHgで、PSありません。
mPCWP=10mmHgで、左心系の問題での肺高血圧は、否定されます。
RA圧波形からは、明瞭なv波化はないようです。圧もそんなに高くない。
この心電図のポイントは、
◎ 右軸偏位があること。
◎移行帯が、強く時計軸偏位変異していること。
の2点ですね。
右心系が危ない! と思えれば合格です。
心電図から病態を想起する。病態から心電図を想像する。
これができると、心電図解読は楽しいですよ。
今回は、(危ない心電図の見分け方)に相応しい症例でした。
【 右心系の変化に、心電図は敏感です 】
【 Pulmonary Pは、感度・特異度あんまり高くありません 】
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