ECG-158:answer
WQRSTで、CRBBB様のパターンですね。V5,6のS波も大きく、VTを想起させます。でも、なんか『あぶない感』が少ない。よくよくV1,2を見ると、基線がなんか変です。
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P波にしては、形がちょっと変わっているし、QRS直後に似たような波形が、特にV2で明らかです。
P波にしては、形がちょっと変わっているし、QRS直後に似たような波形が、特にV2で明らかです。
ATPを静注してみました。
=10mgを one shot で静注し、後押しの生食フラッシュです=
以下の波形を得ることができました。
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さっきのP波様の波形が残り、AV伝導が一時的・強力に抑止されています。AV伝導を介したリエントリー型のPSVTは、否定ですね。
また、QRS波形は変わりません。CRBBB様のQRSで、VTでもありませんでした。但し、V5,6のS波は大きく、心室内変行伝導がさらに加わっているかもしれません。
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II,III,aVFを、目を凝らしてみても、いわゆるのこぎり波はありません。典型的な心房粗動では、ありませんね。
答えは、
(1) 心房粗動{非典型例}
(2) AT{心房頻拍}
となります。どちらでも、OKです。
ECG-083(63才男性)も、同様の症例でした。その時はAFLと診断し、ATでもいいかも、とお断りを入れました。分類の違い(米国と欧州の)ですから、拘っても仕方有りません。今は、両論併記とのスタンスです。
左房内での異所性自動能亢進・マイクロリエントリーの可能性も高く、カテーテルアブレーションで治療できるかは、微妙です。12誘導心電図で悩んでも仕方ないので、EPSを含め不整脈専門医に、丸投げして下さい。
100才のこの症例は、翌日アミサリンの点滴投与(ダメモトでの頻拍停止狙い)と、ジルチアゼム(100mg/day)でのAV伝導抑止=rate controlを図りました。
ATは治りませんでしたが、房室電導は抑止されて、心拍数は80前後となっています。但し、このような超高齢者では、今後は抑制が効きすぎて、極度の徐脈となることもあり、経過観察は十分気をつけて下さい。