heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG192:answer

** ハジメの1枚:新入職医師のための心電図-08 **

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 80才代男性です。

 脳梗塞後遺症があり、ワルファリンが投与されていました。

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 心房細動を持つ患者に、抗凝固療法を行わない場合には、理由が必要です。ワルファリンにせよ、NOACsにせよ、予後に大きく関係してきます。認知症がひどい(すぐ転倒する)・治療困難な消化器癌があり、今でもじわじわ出血している、などが投与しない理由ですね。

 心房細動の診断は、当然12誘導心電図で行われます。EPSまでする必要はない。

 発作性心房細動の場合には、その発作時の12誘導心電図が、唯一の証拠となります。滅多に発作時の心電図が記録できない患者さんもいます。しっかりと記録を残しておきましょう。

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 さて、この患者さんの3年前の心電図です。

 「心房細動(Afib)としては、何かおかしいな??」

 と、初期研修医の方は、お気づきになったでしょうか?

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 もう一度、問題の心電図を見てみましょう。

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Ecg192noisyforweb

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 全誘導の基線にノイズが乗っているとの前提で見直すと、P波らしいのが見えてきます。これが見える部分のPR間隔・RR間隔は一定です。洞調律と判断するのが、妥当でしょう。(ぱっと見は、RR間隔は絶対不整のように見えちゃうんですが、、)

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 心電図viewerの表示を変更し、全記録時間の誘導別同時相の表示です。

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Ecg192noisyecgforweb

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 問題は、のQRSの解釈です。narrow-QRSの早期収縮です。SVPCと考えてもP’が見当たりません。どうしましょう。。

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 別の日の心電図を追加で供覧します。

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Ecg192forweb

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 のnarrow-QRSの早期収縮の後に(ST部分に)P’が見えます。II 誘導では陰性P’となっています。つまり、房室接合部レベルと思われる早期収縮(=narrow-QRS)と逆行性P波の検出だった訳です。( aVRで陽性P'となれば、さらに分かりやすかったのですが)

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 心電図の自動診断は、生真面目に全てを調べて検出し、その測定値を教えてくれます。QRS幅・QT/QTcなど、信頼性は高いです。(デルタ波がなければ)

でも、それは正しい入力の存在(=ノイズのないdata)があってです。このような状況では、eye-ball(人間の目)の方が、瞬時に状況を理解します。

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 正解は、洞調律で接合部レベルの早期収縮の存在でした。

 おかしいなと思ったら、ノイズの乗らない心電図の撮り直しです。

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 心房細動があると、まず抗凝固療法の適応を考えねばなりません。実際的に云うと、CHADS2-scoreと相談することと、なります。

 抗凝固療法は、出血性合併症のリスクを背負う治療です。患者さんが、これを背負います。

 心房細動は、ありふれた不整脈ですが、その診断は繊細に行って下さい。たかが心房細動診断ですが、されど心房細動診断なんです。

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教訓

【 ノイジーな心電図では、自動診断も間違いやすい 】

 

【 心房細動の心電図診断は、慎重に!(治療選択に繋がるため) 】

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