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Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-204:answer(3/3)

ECG-204:answer (3/3)

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  90才代の男性で、高カリウム血症でした。

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 高カリウム血症と下壁のACSで説明しようとしましたが、ほころびが出てしまいました。心電図と心筋酵素だけでの判断は、困難でした。

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  心エコーの結果を見てみます。

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Ecg204forweb

クリックすると、ECGが拡大します。

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  前壁がわずかに可動しているだけでした。いわゆる Ischemic-DCMの状態です。左室の拡大は著明です。心エコーでは、ここが今回の虚血の責任部位!と判定できません。おそらく、虚血発作が何回か積み重なった結果のようです。

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  数日後に、前医からの報告で、(詳細は不明ですが、昨年心機能がかなり落ちていると、他の医療機関から指摘されていたようです。)との情報を頂きました。

  いくつかの医療機関を経ると、情報の質は目減りしていきます。

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  Doubleの心筋シンチを施行しました。

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Ecg204forweb_2

クリックすると、ECGが拡大します。

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  タリウム心筋シンチでは、前壁を除き、広範な取込障害を示しています。心筋壊死領域が広い・・と云うか、前壁しか生き残っていない。

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  ピロリン酸心筋シンチでは、心尖部と下部中隔に集積=新鮮梗塞部位=を、認めました。ここが、今回の虚血部位です。前下行枝 #7,8の部位(LADの末端側)くらいなのでしょう。

  超高齢・CKDにて、冠動脈造影は施行されていません。

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 もう一度、心電図の経時列表示に戻ります。

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Ecg204forweb_3

クリックすると、ECGが拡大します。

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◎ 搬入時は、高カリウム血症もあり、心電図の修飾因子が、てんこ盛り。

  •  II, III, aVF でのST上昇と、aVLでのST低下は、経時的に持続している。
  •  V1-4のPRWP(V1,2はQSですが)も、著変なし。
  • V4-6のST部分の揺らぎは、心筋血流の変動を意味しているかも、しれません。

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 やはり、私には、後知恵としても、心尖部のACSを説明できません。

 でも、この患者の心電図は、(私はかなり危ないんですよ! 心電図解釈にのんびり時間をかけていないで、すぐに他の診断検査と治療を、始めて下さいよ!!)と、ちゃんと叫んでくれています。

  この意味において心電図は、やっぱり頼りになる相棒なんです。

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(追加です)

   ACSの急性期に、カルシウム製剤をゆっくりとは云え、静注するのは、やはり考え込んでしまいそうです。冠動脈を含め、動脈の攣縮(spasm)を惹起するかもしれないからです。まして、ACSの状況です。

   しかし、この症例はもうちょっとで、心停止になるシーンです。一旦、カルチコールで心電図を治しておいて、他の方法(GI 療法・ 強制利尿 etc.)で、血清カリウム値を下げるしか、なかったと考えております。

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