ECG-249:answer(2/2)
70才代女性が、ERで急変し、肺動脈造影を行いました。
既に、CT造影で理解されていますが、右肺動脈内の大きな血栓像を、コントロール造影で確認できます。
血栓内にガイドワイヤーを通過させ、血栓内にmulti-holeのカテーテルを誘導します。
tPAを、pumping様に注入していきます。
tPA投与後に、末梢血管が少し見えやすくなりました。何より、肺動脈圧収縮期圧が、40→25mmHgまで改善しています。
血栓をtPAで細かく砕く事で、肺動脈内に血流が再開します。ICUに移り、持続のtPA点滴投与→ヘパリンとして、急性呼吸不全の状態を離脱できました。(その後、DOACsとなります)
第二病日の心電図を追加して、この患者の心電図変化を見てみましょう。
あれ、第二病日は、なんか肺塞栓らしい感じですね。
よく見てみましょう。
S1,Q3,T3 及び S6 のパターンです。
さらに、V1-3で、明瞭な陰性T波を呈しています。
典型的な肺塞栓パターンです。
S6は、S1と同様に、急性右心負担の表現です。
でも、私は思いました。
「おいおい、心電図くん。今頃典型的な波形になるンかね。それじゃ、緊急治療に、役立たないじゃないか。」
「え、よくER急変時の心電図を見ろって。確かに、新たなS1,Q3がちょっと出ているね。経時的変化で、ちゃんと警告してるんだ、って云うんだね。」
振り返って見ると、確かにそうなんです。でも、分かっていて見ないと、あんまり気になんないですよね。。
また、第二病日のQ3,T3も、云われてみればそうなんですけど、すごく異常には見えませんよね。S1も、この程度の右軸偏位は、正常例にナンボでもあります。
今回の教訓。
【 典型的S1,Q3,T3は、肺塞栓の全時相のどこかで出現するかも 】
【 肺塞栓診断に、心電図は十分条件以下の位置付け 】
私は、心電図変化を来す肺塞栓は、血行動態が破綻しつつある警告と研修医諸君に伝えていましたが、例外は有りですね(T_T)。