【コラム-008】12誘導心電図で、左室肥大(LVH)を認知できるか?
12誘導心電図で、左室肥大(LVH)を認知できるか?
「子供は風の子、オレの子じゃない」
高校生の時に覚えた下らないギャグを、思い出しました。
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さて、LVHを「認知」する方法は、いくつあるでしょう。
◎ ご遺体の剖検時
◎ 心筋シンチ
◎ MRI
◎ 心エコー
◎ 心電図
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左室肥大の心電図診断基準は、いくつかあります。
あっ、覚えなくていいですよ。
むしろ、覚えない方が、いいんです。
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心エコーのなかった頃は、剖検で見つかる左室肥大と生前の心電図を比較して、診断基準が作られました。それしか、手段がなかったんですね。
R波の高さを物差しにしていたんです。
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心筋シンチは、アバウトに心肥大を表示しますが、著名なものしかわかりません。その事を知るためだけに行うのは、馬鹿げています。
MRIは、かなり精緻に肥大の分布を表示します。
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でも、大半は心エコーでわかりますし、
◎ 左室肥大の有無、その分布
◎ 壁運動の性状
◎ 合併する障害評価(弁膜異常)
と、広範な情報を得ることができます。
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そもそも、心電図からLVHの何を知ることができるのでしょうか?
起電力(R波高)は、心筋の元気さの表現です。どれだけ電気的興奮を起こせるのかを見ています。但し、必要以上に頑張っていることもあるし、体型の影響や胸水/肺気腫の影響も大きいです。
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ST-T変化は、心筋のへたばり具合を見ています。Strain-patternがその典型例です。
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普通の体型で、高電位とST-T変化を認めたら、LVHを強く示唆します。でも、数値で割り切ると、いろいろと支障が出てきます。
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【血圧が正常で、理学所見も正常で、左室肥大を起こす基礎疾患の存在はあまり考えられません。QRS波の高電圧のみから「左室肥大」と診断することは厳に慎むべき事です。 我が国の市販されている心電図教科書に、心電図的左室肥大診断基準として Sokolow-Lyon基準 (RV5(6)+SV1≧35mm) を用いるように薦めている書物がかなり多く(注:当時.)ありますが、これは明らかに誤っています。単に誤っているだけでなく、「正常」な人を「左室肥大」と誤って診断し、「心電図性心臓病」患者を作るという犯罪を犯しているとも言えます。 】
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すでに、大学でもLVH基準はあまり教えないと聞いております。
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しかし、です。
我々は、12誘導心電図によって、LVHを想起するんです。
さらに、異常心音(S4, S3)まであると、心エコーをしたくなります。
こちらの感度を鈍くしても、見逃せない高電位 or/and ST-T変化で、
LVHを疑います。
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LVHの典型例は、それなりに癖のある心電図を呈します。
でも、元気のない心筋はR波高を出せないこともあります。
高血圧・AS/AR・H(O)CMは、基礎疾患の最低鑑別に載せて下さいね。
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追記:
RV5(6) + SV1≧40mm (30才以下の男性では50mm)
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