ECG-208:answer
80才代女性。ECG-207症例の2年後です。
(心電図-01 入院時心電図)解釈は、
* 心房粗動の状態。
* II, III, aVF でのこぎり波がはっきりしないタイプ。
→↓と↓を、Flutter波と、考えました。
→PATも否定は出来ないか。
* DDI-modeとなり、心室ペーシング 50bpmで作動している。
* PVC(↓)に対して、適切に心室sensingが働いている。
ペースメーカー作動に、問題はないようです。
50bpmと云うベーシックレートの設定は、おそらく自発のP波による心拍数を優先させるための処置でしょう。
今回は、たまたまAFL様の状況です。
DDIとは、
DDD と異なり、心房センシングがあっても心房ペーシングが抑制されるのみで、心室ペーシングをトリガーできない設定です。
上記は、ネットで閲覧できる良質なペースメーカー入門読本です。
DDDモードだと、心房頻拍・心房粗動・心房細動になった時に、心房興奮をそのまま心室のリードに伝えて、著明な心室頻拍状況としてしまう危険があります。
これを防ぐために、
◎ 一定の心房での頻拍となると、これを心室に伝えないI (Inhibit)してしまいます。→心房での心拍数の上限を定める。
- これ以上となった場合に、ペースメーカーはあたかもVVIモードのように振る舞います。→心室のペーシングレートの下限設定に従う。
入院時は、これがうまく作動していたようです。
(心電図-02 入院時心電図)
すぐに疑うのは、PMT(Pacemaker Mediated Tachycardia)ですね。
でも、もともとAFL様の心電図です。心室→心房への逆行伝導が入る隙はありませんね。なお、この間にペースメーカーの設定変更は、行っておりません。
DDIモードは、もともと on でした。
ペースメーカーの設定は、
- DDI-モードが入る、心房のHR=130bpm
- 心房でのセンシング域値 = 0.5mV
でした。
我々の下した判定は、
- 心房のAFL様の波形認識が、ペースメーカーにとって、ぎりぎりであった。
→心房興奮波形として、認識したり・しなかったり、している。
→よって、ある瞬間から、DDIモードが入らなかった。
→このペースメーカー設定の、Upper-rateぎりぎりの130bpmで、追従した。
- 但し、なぜ急にこうなったかは、不明。心房内波形の変化としか、云えない。
ペースメーカーの設定を、変更しました。
- 心房のセンシング域値=0.3mVと敏感にする。
- 心室での基本レートを70bpmとしました。
設定変更後の心電図です。
(心電図-03 最終設定変更後の心電図)
心房のセンシング感度を敏感にしたことで、全ての心房興奮波形を、きちんと補足して(心房頻拍)と感知しました。よって、DDIモード下で、70bpmの心室ペーシング(=VVIの状態)となっております。以後、頻脈発作は、出現しておりません。
え~い !! このシンプルな説明じゃ、よく分からないよ。
もっと、系統的且つ、わかりすく説明してよ !!
とお思いの方は、前回のコラムでご紹介した
今さら聞けない心臓ペースメーカー:FAQ on cardiac pacemake
国循の 岡村 英夫 先生 著/2015年出版。
を、参照されて下さいね。名著です。
.
.
.
.