heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-208:answer

80才代女性。ECG-207症例の2年後です。

Ecg208forweb

(心電図-01 入院時心電図)解釈は、

* 心房粗動の状態。

II, III, aVF でのこぎり波がはっきりしないタイプ。

    →を、Flutter波と、考えました。

    →PATも否定は出来ないか。

DDI-modeとなり、心室ペーシング 50bpmで作動している。

* PVC()に対して、適切に心室sensingが働いている。

  ペースメーカー作動に、問題はないようです。

  50bpmと云うベーシックレートの設定は、おそらく自発のP波による心拍数を優先させるための処置でしょう。

  今回は、たまたまAFL様の状況です。

 DDIとは、

DDD と異なり、心房センシングがあっても心房ペーシングが抑制されるのみで、心室ペーシングをトリガーできない設定です。

    GYGライブラリー:ペースメーカー入門 より

   上記は、ネットで閲覧できる良質なペースメーカー入門読本です。

   DDDモードだと、心房頻拍・心房粗動・心房細動になった時に、心房興奮をそのまま心室のリードに伝えて、著明な心室頻拍状況としてしまう危険があります。

  これを防ぐために、

◎  一定の心房での頻拍となると、これを心室に伝えないI (Inhibit)してしまいます。→心房での心拍数の上限を定める。

  • これ以上となった場合に、ペースメーカーはあたかもVVIモードのように振る舞います。→心室のペーシングレートの下限設定に従う。

   入院時は、これがうまく作動していたようです。

(心電図-02 入院時心電図)

   すぐに疑うのは、PMT(Pacemaker Mediated Tachycardia)ですね。

    でも、もともとAFL様の心電図です。心室→心房への逆行伝導が入る隙はありませんね。なお、この間にペースメーカーの設定変更は、行っておりません。

 DDIモードは、もともと on でした。

   ペースメーカーの設定は、

  •  DDI-モードが入る、心房のHR=130bpm
  •   心房でのセンシング域値 = 0.5mV

   でした。

   我々の下した判定は、

  • 心房のAFL様の波形認識が、ペースメーカーにとって、ぎりぎりであった。

     →心房興奮波形として、認識したり・しなかったり、している。

     →よって、ある瞬間から、DDIモードが入らなかった。

     →このペースメーカー設定の、Upper-rateぎりぎりの130bpmで、追従した。

  • 但し、なぜ急にこうなったかは、不明。心房内波形の変化としか、云えない。

   ペースメーカーの設定を、変更しました。

  • 心房のセンシング域値=0.3mVと敏感にする。
  •   心室での基本レートを70bpmとしました。

 設定変更後の心電図です。

(心電図-03 最終設定変更後の心電図)

Ecg2083pmforweb


   

  • 心房のAFL様の波形は、変化有りません。
  •  DDIモードが作動して、70bpmでの心室ペーシングのみとなっています。

   心房のセンシング感度を敏感にしたことで、全ての心房興奮波形を、きちんと補足して(心房頻拍)と感知しました。よって、DDIモード下で、70bpmの心室ペーシング(=VVIの状態)となっております。以後、頻脈発作は、出現しておりません。

  え~い !!  このシンプルな説明じゃ、よく分からないよ。

  もっと、系統的且つ、わかりすく説明してよ !!

  とお思いの方は、前回のコラムでご紹介した

  今さら聞けない心臓ペースメーカー:FAQ on cardiac pacemake

  国循の 岡村 英夫 先生 著/2015年出版。

  を、参照されて下さいね。名著です。

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