ECG-210:answer(その1)
80才代の女性で、心電図が異様に変化した症例です。
この患者さんの X-dayの半年前の心電図を示します。
特に大きな問題は、ないようです。
X-1 dayの心電図の特徴を解説します。
- V1のST上昇がない。
- aVRのST低下を認める。
V1のST上昇がないのは、心基部付近の心筋障害がない!ことを意味します。
aVRのST上昇は、心尖部の心筋障害によるST上昇のミラーイメージです。
この所見は、心尖部のバルーニングを起こした(たこつぼ心筋症)の病態にマッチしているんですね。
V1誘導は、心基部でタコツボ化した障害心筋上にはありません。ST変化が起きにくい訳です。
aVRは、-aVR(心尖部)でのST上昇のミラーイメージとして、ST低下します。
LADのACS症例と比べると、V1のST-T変化の違いがわかります。
ここで、もしLADの真ん中(#7)あたりの閉塞を示すACSならば、タコツボ心筋症様に、V1のSTが上昇せずに、aVRのSTが低下する心電図を示さないの?との疑問も生じます。
そうです、あり得るんですね。完全な鑑別には、なり難い。
でも、この考え方のユニークなのは、
【 aVRでST低下せず、かつV1でST上昇するならば、それはタコツボ心筋症ではありません! 】
と、rule out に使える点なんです。
以上は、小菅雅美先生の著書に、詳しく述べられています。必読です。
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