heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG018:answer

 68才男性の典型的前壁中隔梗塞の症例。V1-4がQS patternで、ST上昇が残り、心室瘤を示唆する。のですが、これに、つまずいている研修医もいるでしょう。

 『QSって云うけど、V1-2に、r 波が、あるじゃん???』

 お答えします。これはですね、

 【 QS pttern + small r wave】 なんですね!

 前下行枝の起始部に近いところが閉塞し、かなりの範囲が虚血壊死を起こしています。それで、V1-4はQS patternです。notchも認められ、正常心筋との境目で、いざこざが起きております。しかし、小さな側枝・中隔枝で残存した心筋が起電力を持っており、これが r 波として乗っかってきます。こう、考えると、素直に、前壁中隔梗塞と、受け入れられるでしょう。この説明は、厳密には、異論もあると思いますが、臨床的には矛盾無く便利ですので、ボクは使っております。

 なお、この現象を、

【RRWP:Reversed R Wave Progression】 と呼びます。PRWPよりはるかに虚血を示唆します。

 心エコーでは、広範囲前壁の運動障害を、呈していました。

 さて、2番目の心電図ですが、

(1). 頻脈である。もしかすると、AFL2:1伝導かもしれないが、今回はここ論じません。

(2). V1-5まで、QS patternに近くなっている。(small r 波はあります)

 虚血が拡がったのでしょうか?新たな心筋梗塞出現か?

 結果は、どうも違いました。

 次に示すように、また心電図はもとの形に戻っています。(2枚目より一週間後)

【胸部誘導は、電極の貼り方(場所)が、少しずれると形がかわることがある!】

 肢誘導は、手首でも肘関節でも、波形変動は起きません。

 胸部誘導は、単極誘導であり、設置点が数㎝ずれる・一肋間上下にずれると、大きく波形が変わることがあります。

 特に、虚血部位と正常心筋との境目にある電極では、このような電位のずれが出やすいです。

 CCUなどでは、電極部位を、マーキングしておいて、施行者ごとのずれを防いだりします。

 こんなこともあるんだと、覚えて置いて下さいね。

 2番目から一週間後の心電図

E01880029877v14qs20071101

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