コラム-004:ECG-051の追加解説;虚血の心電図を感じ取る
心電図が、一番役に立つのは、急性虚血:ACSです。 (不整脈診断を除いて、当たり前ですけど)
典型的所見があれば、これ一枚で確定です。
臨床症状よりも、理学的所見よりも、心エコーよりも、血液検査値よりも、その有効性は圧倒的です。すぐに、治療に進むことができます。典型例では。
もちろん、判定を悩む症例も沢山ありますが、私が言っているのは、(典型的なACSの心電図所見)を持つ場合です。
そして、これが典型的所見だと、瞬時に決めつけられるようになるのは、沢山の(典型例)を、見て・体感しておくことです。
この症例は、まず倒れることから始まりました。それも心肺停止です。除外診断の一番に、ACSは挙げられねばなりません。
○突然の発症であること。
○不整脈発作(=VT)が、生じていたこと。
○ACSが、発症してもおかしくない、高齢者であったこと。
○胸部誘導で、STの典型的上昇所見が出ていたこと。
採血(トロポニン)・心エコー(壁運動)も、この症例では補助的所見です。
冠血流の絶対的低下の原因が、大動脈解離でないかは、念のため、心エコー時に評価されるべきです。
これらと同時に、循環器科にconsultして、緊急心カテ(Intervension)の準備が始まります。
LAD,Seg-7の閉塞で、緊急のPCIが行われ、成功しています。
心電図のQ波は、【電気的に心筋が静止している】状況です。
心筋壊死で二度と活動できない場合もあります。(ACSでは、これが最多)
でも、standstill,hibernationで、今電気的活動ができないだけで、経時的に回復する場合もあります。特に、PCIで早期に心筋虚血を救済する現代は、Q波=心筋壊死、と決めつけず経過観察が必要です。
但し、電極の貼付場所のちょっとした違いが、見かけ上のQ波の出現/消失を生むことがあるので、要注意です。
症例-051 の急性期胸部誘導の、経時的変化を示します。