heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-167:answer

ECG-167:87才女性。長期の外来通院中で、脳梗塞後遺症があります。

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 20年以上、外来通院をされています。脳梗塞後遺症ですが、杖歩行で自立です。心電図を、まず読んでみます。
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* P波が無く、RR間隔不整です。→f波は微妙ですが、心房細動は明瞭ですね。
* 全体的に、電位が低い傾向にあります。
* 著明な左室肥大はない。
* 明瞭な右軸偏位もない。
* ST-T変化も、著しいものがない。
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 心房細動以外に、特に指摘できることはなさそうです。これだけで、疾患名は出てきません。
 では、同時に示した胸部レントゲンを判定します。
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* 著明な心拡大を認めます。
* 心左縁の III,IV弓の著明な張り出しがあります。
* 心右縁の II 弓もやや張り出し有り。
* 大動脈弓が、小さい気がします。
* 明らかなうっ血・胸水は、たぶんありません。(但し、左下肺は見えません)
* 左の II 弓が拡大と見るならば、肺動脈拡張もありそうです。
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 何らかの心疾患があるのは、間違いない。著明な心のう液貯留も否定はできない。低電位傾向ですし。III弓の突出は、僧帽弁疾患の存在を想起させます。大動脈弓部が小さいのは、心拍出量が低下した病態かもしれません。
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 こう云う時は、まず聴診です。(本当は、こっちが先ですが)
 聞こえました。拡張期のrumblingが。MOSもあります。
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 これで、僧帽弁狭窄症による心房細動が、決まります。聴診だけでも、この疾患の確定は可能ですが、日本ではあんまり見かけない疾患となりましたので、自信を持って言い切るのは、度胸が要るかもしれませんね。
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 心エコーで、僧帽弁の病態を確認すれば、臨床的確定です。
 僧帽弁前線のDoming。DDRの低下。左房の拡大。僧帽弁前交連の切開化と交連部癒着を認めます。
 胸部CTでは、肺動脈軽度拡大。左房拡大。右房も拡大。が明瞭です。
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 ワルファリンを当然投与していますので、左心耳血栓はありません。
 →リウマチ性僧帽弁疾患(mitral stenosis)ですので、NOACsは使えません。
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 心房細動の原因疾患としては、現在かなり下位にランクされるリウマチ性心臓病です。日本では。
 書籍的に、ブログ的に体験しておかないと、なかなかピンとこない方も、今は多くなっております。
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