ECG027：answer

　ECG027：40才女性。体重25Kg. 来院時の心電図です。もともと、anorexia nervosaで加療中でした。

　母親の死をきっかけに、急激な体重減少を示し、かかりつけ医より、紹介入院となりました。

　甲状腺機能正常。ACTH・コルチゾール値も正常範囲内。カルシウム・リンも正常値。アルブミン=4.0mg/dL　そして、

　血清カリウム値=2.8mEq/L、Na=146mEq/L でした。

　心電図を考えてみます。

＊とても痩せているので、心臓と胸壁がV1,2でとても近い。V1,2の波高はとても高いですが、これは物理的要因で、心肥大ではありません。

＊立位心のために、aVR=aVLに近似し、I 誘導のR波低いです。

＊問題のST-Tですが、ちょっと変です。

　二相性のT波(陰性→陽性)を示します。

＊通常の低カリウム血症ならば、T波の平定化＋陽性U波の顕在化=QT延長となります。びよ〜んとT波が延びるイメージなんですね。もともとの陰性T波に陽性U波が重なったのでしょうか？さらに、体型による修飾が、何かあるのでしょうか？

⇒但し、ネット検索(画像)では、同様のST-T変化の低カリウム血症の心電図を、けっこう拾うことができますので、この変化usualかも、しれません。(浅学ですいません)

【典型例ではないけれど、鑑別に低カリウム血症も考えるべき心電図所見　とするべきか】

　入院して、カリウムの補正を行いました。幸い、入院後は食思も悪くなく、半分くらい食べてくれました。Anorexia nervosaとしては、めずらしく穏やかな経過でした。

　なお、anorexia nervosaは、低カリウム血症(摂取不足)の原因鑑別のひとつです。

　次は、翌日の心電図で、ST-T変化は改善を示しています。

クリックすると、ECGが拡大します。

　第５病日の心電図です。血清カリウム値=4.5mEq/L。以後心電図波形の変化ありませんでした。

　もともとの陰性T波は、ないようです。

クリックすると、ECGが拡大します。

◎　anorexia nervosa　をググると、

　　　　（神経性食思不振症）55,600件

　　　　（神経性無食欲症） 120,000件

　　でした。

　　現在は、神経性無食欲症の呼び名が、やや優位か！