heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-138:answer

ECG-138:90才女性の肺炎が、急激にショック様となりました。

 後期研修医の主治医は、懸命な処置を行いました。
 「水を絞らず」に輸液し、カテコラミンを使用しませんでした。
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 結論は、
たこつぼ心筋症による、巨大心室瘤形成と流出路狭窄】によるショック
 でした。
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 たこつぼ心筋症の心電図で、一番有名なのは、
【GNT:Ginat Negative T(胸部誘導)。日本名〜びっくりT波】
 です。
 一枚だけ典型的心電図を出せ、と云われたら、私もこれを選びます。
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 でも、{たこつぼ}心電図の特徴として、何でもあり!があります。
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E138st

クリックすると、ECGが拡大します。

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 急性期の心電図では、V3-6のST上昇が特徴的で、前下行枝のSeg7以後のACSなどを想起させます。でも、心エコーでは、巨大な心室瘤と、心基部の過剰収縮運動が認められます。もし、これがACSならば、CPK>10,000、トロポニン値>20くらいをイメージします。当然ショックで電撃性肺水腫です。
 でも、この症例は、max-CPK=400、トロポニン値=3.8でした。
 心機能も、経時的に改善しております。
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 補液による心不全悪化しましたが、耐えしのぎました。急性期に血管拡張・利尿剤投与を先行していれば、亡くなっていたと思います。
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 急性期の心エコーでは、心尖部心室瘤と心基部過剰運動が明瞭です。
 流出路狭窄が出現し、HOCM様の病態となっています。

E138lvchamber

E138

クリックすると、拡大します。

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 この症例の心電図を経時的に見ていくと、GNTが出現しました。

E138ecgtimeflow

クリックすると、ECGが拡大します。

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 多くのたこつぼ心筋症は、見つけられることなく発生し、静かに治癒していきます。突然死の原因でもあります(でしょう)。

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 この疾患の存在を想起できること。

 急性期の対応を、誤らないことが大切です。

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