heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-155:answer

シンプルな時代がありました。

* 労作時の胸痛発作 ⇒ 動脈硬化性の狭窄。(労作性狭心症)

* 安静時の胸痛発作 ⇒ 冠攣縮による冠閉塞。(異型狭心症)

 現実には、冠動脈粥種の破綻があり、血小板の問題があり、凝固系カスケード問題があり、スパスムがありで、単純でないことがわかりました。全てを含んで、ACSと云う概念が提出され、現在に到っています。

 さて、この症例ですが、深夜・早朝の安静時に、胸痛発作が出現しています。典型的な症状です。Spasmを疑ってHolter-ECGは、有りですね。

 Holter前の12誘導心電図は、著変無いと思います。

 Holter-ECGですが、短時間の内にST上昇が認められます。最終的には、ヨットの帆のようなST上昇で、PVCも出現しました。幸い、二段脈に止まっています。

 また、上昇したSTは、速やかに基線に戻っていきました。約6分間の経過で嵐のように起きた出来事です。冠動脈の攣縮(spasm)により、冠閉塞出現⇒ST上昇。攣縮の解除で冠血流再開⇒STが基線に戻る。これが、発作性に繰り返しました。

 PCIでballoonを拡張させ、短時間の冠血流途絶時に、このような変化を記録することが、よくあります。

 この方は、カルシウム拮抗薬を投与することで、見事に症状は消失しました。スパスム主体は、間違いなさそうです。でも、その後に行われた冠動脈造影では、#6,7に75%狭窄を認めています。このような症例では、PCIを行うか、否か、悩んでしまいますね。

 なお、スパスムの症例では、自覚症状だけでなくHolter-ECG上のST上昇が無くなるまで、しっかりと薬物療法を追加することが、基本です。スタチンの上乗せも、発作軽減につながる可能性があります。