ECG-191:answer
=answer編が、大幅に遅れてしまいました。申し訳ございませんm(_ _)m=
=いろいろ悩んで、いろんな方に相談しておりました=
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60才代男性で、badな糖尿病があり、COPD(=喫煙)があり、アルコールの問題もあり、少ないとは云えない社会的背景のある患者さんが、病棟の廊下でバタンと倒れました。
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血圧低下・頻脈・意識は不鮮明・けいれんはない。何を考えるか?
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*迷走神経反射→頻脈が合わない。
*消化管出血→可能性あり。(貧血check.他が否定されたら内視鏡も)
*頭蓋内疾患→梗塞にしろ、出血系にしろ、血圧低下はかなり危ない。
*肺塞栓→これは、否定出来ない。
*大動脈解離→これもあり得る。
*ACS→それに伴うVT、あり得る。
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血圧の触れない頻脈なので、医師をcallしつつ(土曜日の午後で、病棟にはいませんでした)、看護はモニターを装着しました。
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出たり、引っ込んだりのWide-QRS-Tachycardia(WQRST)ですね。
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WQRSTが、原因しろ・結果にしろ、循環器関連疾患からの検索となります。まず、この頻拍発作時の12誘導心電図を記録しました。
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VT以外の診断は、ちょっと難しい。
と云うより、{ VT発生! }として、すぐに対応すべきです。
入院時心電図とは、明らかに波形も異なっています。
【右脚ブロック形 + 左軸偏位 を示す WQRST】
= ILVT(idiopathic left ventricular tachycardia)
と考えるのが、普通です。この特徴は、
* QRS幅は、比較的narrowである(ここは、ちょっと合わない)
*ベラパミル静注でVT停止しやすい
*心室中隔が起源となる
*心房ペーシングで誘発可能である
と、教科書的には、なります。
但し、器質的心疾患がない患者さんに出現する、が基本です。
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解釈に困ったのは、このVT(と思われる波形)が自然停止した後の12誘導心電図の波形です。
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VT中の波形に、そっくりです。リズムは心房細動のようです。
もう一度、頻拍時のモニター波形を見ると、頻脈になったり、心房細動と思われる不整を示したり、色々です。
この頻脈発作時は、RR間隔はよく揃っており、VTでないのならば、2:1伝導の心房粗動を疑うことになります。
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VTでないとしたら、どうしてこのような波形となるのか?
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虚血をベースとした状況で、一過性に2枝ブロックが発生していた、との解釈になります。ちょっと苦しいのですが、他に説明できない。
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なお、この患者さんは頻拍発作を繰り返しつつ、ショック状態を離脱しないために、IABP補助下で、PCIを施行しております。
その後、アミオダロン・ビソプロロール(β-blocker)・ジルチアゼムの併用投与中です。
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入院時の12誘導心電図と、WQRST,ショック状態,PCI後4日目の心電図を比較すると、波形自体は安定化して似てきてきますが、心筋障害のためか、全体の波形が低電位化しています。
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PCI前後のCAG画像です。
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さて、この頻脈は実際何だったのか?
想定-1) 虚血による二枝ブロック + 2:1伝導AFL or PAT
想定-2)VT。 ILVT (器質的心疾患、大ありだけど。。)
本来は、EPSを行い鑑別診断を行うのがベターかと思います。今回は、12誘導心電図からの考察でした。悩んだままです(-_-;*)。
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