heart2019改 の ECG-001 〜 ECG-315 まで移転です。

Cardio2012のECGブログ(from ココログ)よりのインポートです。

ECG-191:answer

=answer編が、大幅に遅れてしまいました。申し訳ございませんm(_ _)m=

=いろいろ悩んで、いろんな方に相談しておりました=

.

.

 60才代男性で、badな糖尿病があり、COPD(=喫煙)があり、アルコールの問題もあり、少ないとは云えない社会的背景のある患者さんが、病棟の廊下でバタンと倒れました。

.

 血圧低下・頻脈・意識は不鮮明・けいれんはない。何を考えるか?

.

*迷走神経反射→頻脈が合わない。

*消化管出血→可能性あり。(貧血check.他が否定されたら内視鏡も)

*頭蓋内疾患→梗塞にしろ、出血系にしろ、血圧低下はかなり危ない。

*肺塞栓→これは、否定出来ない。

*大動脈解離→これもあり得る。

ACS→それに伴うVT、あり得る。

.

 

 血圧の触れない頻脈なので、医師をcallしつつ(土曜日の午後で、病棟にはいませんでした)、看護はモニターを装着しました。

.

.

Ecg191

.

.

出たり、引っ込んだりのWide-QRS-Tachycardia(WQRST)ですね。

.

 

  WQRSTが、原因しろ・結果にしろ、循環器関連疾患からの検索となります。まず、この頻拍発作時の12誘導心電図を記録しました。

.

Ecg191312vtforweb

.

 VT以外の診断は、ちょっと難しい。

 と云うより、{ VT発生! }として、すぐに対応すべきです。

 入院時心電図とは、明らかに波形も異なっています。

 

【右脚ブロック形 + 左軸偏位 を示す WQRST】

 = ILVT(idiopathic left ventricular tachycardia)

 と考えるのが、普通です。この特徴は、

* QRS幅は、比較的narrowである(ここは、ちょっと合わない)

*ベラパミル静注でVT停止しやすい

心室中隔が起源となる

*心房ペーシングで誘発可能である

 

 と、教科書的には、なります。

 但し、器質的心疾患がない患者さんに出現する、が基本です。

.

.

 解釈に困ったのは、このVT(と思われる波形)が自然停止した後の12誘導心電図の波形です。

Ecg1914vt12forweb

.

 VT中の波形に、そっくりです。リズムは心房細動のようです。

 もう一度、頻拍時のモニター波形を見ると、頻脈になったり、心房細動と思われる不整を示したり、色々です。

 この頻脈発作時は、RR間隔はよく揃っており、VTでないのならば、2:1伝導の心房粗動を疑うことになります。

.

 VTでないとしたら、どうしてこのような波形となるのか?

.

 

 虚血をベースとした状況で、一過性に2枝ブロックが発生していた、との解釈になります。ちょっと苦しいのですが、他に説明できない。

.

 なお、この患者さんは頻拍発作を繰り返しつつ、ショック状態を離脱しないために、IABP補助下で、PCIを施行しております。

 

 その後、アミオダロン・ビソプロロール(β-blocker)・ジルチアゼムの併用投与中です。

.

Ecg191vt12

.

.

.

 入院時の12誘導心電図と、WQRST,ショック状態,PCI後4日目の心電図を比較すると、波形自体は安定化して似てきてきますが、心筋障害のためか、全体の波形が低電位化しています。

.

Ecg1918pci

.

.

 PCI前後のCAG画像です。

Ecg191cag_for_web

.

.

 さて、この頻脈は実際何だったのか?

想定-1) 虚血による二枝ブロック + 2:1伝導AFL   or   PAT

想定-2)VT。 ILVT (器質的心疾患、大ありだけど。。)

 

 本来は、EPSを行い鑑別診断を行うのがベターかと思います。今回は、12誘導心電図からの考察でした。悩んだままです(-_-;*)。

.
.
.
.
.